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tangosaito

21/10/16 日本人は賃金格差の原因をイマイチわかってない


 今月末に衆議院議員選挙を控え、各政党では様々な「マニフェスト(選挙公約)」を出しています。しかし各政党ではこれまでにも様々なマニフェストを出していますが、それに対する総括というのは為されているのでしょうか。私には政党が毎回このマニフェストの分析を行い、その上で更なる公約を出している様に見えません。常に「打ち上げ花火」の様に選挙の度に耳障りの良い言葉を各政党は並び立てているだけ。だからこのマニフェストについても何ら役に立っておらず、単なるポーズとしか見えていないのです。


 さて、今世紀に入り日本国内は「格差社会」となり、それが固着化している様に見受けられます。富む人は更に富み、貧困になる人は更に貧困へと落ち込んでいく。また本来、教育とはこの格差社会を解決する機会を提供するものであったはずですが、どうも国内の教育も崩壊し始めてている様に思うのです。これでは富裕層の子供たちは富裕層のままとなり、貧困層へと落ち込んだ家庭の子供たちは、そこから這い出す機会すら与えられず、結果としてこの格差社会を固着化してしまうのではないでしょうか。


 そんな状況ですが、本日、東洋経済オンラインで以下の記事を見つけましたので、紹介したいと思います。


(いかに労働規制で対処しても問題は解決されない 一橋名誉教授:野口悠紀雄)


 ここでは所得格差について、以下の様に書かれていました。


・所得格差をもたらす大きな原因の1つは、賃金格差だ。

・日本では、企業規模別に大きな賃金格差がある。それは、資本装備率が企業規模別に  大きく異なることが原因になっている。

・この問題を解決しない事後的な所得再分配政策では、いつになっても同じ政策から  脱却できない。


 野口教授によれば、社会の所得格差を生む要因には、以下の3つがあると言います。


 ①相続等の資産保有額の違い

 ②収入を得る手段が絶たれてしまう事

 ③就労の賃金格差


 この3つのうち、①②については国の税制や財政出動で、格差是正への対応する事が可能であると言っていますが、➂に関して言えば、国の税制や財政出動でも対応できないと述べ、岸田内閣が掲げている「所得再分配を経済政策の柱」で問題を解決する事が出来ないと言っています。


 要するに所得を得た後に対する処置を国が幾らやろうとしても、そもそも所得が低い状況であれば、そこをまず解決しない限り、格差是正にはならないと言うのです。だから格差社会を是正するには、この賃金格差の問題を正しく把握し、対策を講じる必要があると言うのです。


 文中の中で、野口教授は独自の分析を進めており、結論として「資本装備率の差が賃金格差をもたらすと考えてよいことになる。」と結論を出しています。この資本装備率とは、企業が付加価値を生み出し、生産性を向上させる為に、機械や設備への投資を行いますが、この投資の程度を示す指標を指す言葉です。

 確かに中小零細企業(この野口教授の資産では資本金10億円以下の企業)では、大企業と比較した場合、中小企業以下、企業規模が小さければ小さいほど、この資本装備率は低くならざるを得ず、同じ付加価値を社会に提供するにも、そこは労働力に頼る事から、結果として「労多くして実り少ない」という状況も生み出してしまう事になるでしょう。そしてそれが結果として所得格差を生み出しているのかもしれません。


 この事から野口教授は「中小零細企業の賃金を大企業並みに引き上げるためには、中小零細企業の資本装備率を高める必要がある。」という結論を出していました。


 でも所得格差を生み出している原因とは、果たしてそれだけなのでしょうか。


 私が見ている限り、それだけではないと思います。一つはこの日本社会の中では「経済のパイ」の大きさが年々縮小している事も重要なファクタでは無いでしょうか。簡単に言えば内需を見ても、人口が減少に転じてしまっている以上、国内需要を求めても以前ほど「大きなパイ」というのが存在しません。ではその減少した「経済のパイ」というのを、外需(日本国外)に求めると言っても、それが出来る企業というのは国内では限られてしまいます。それこそ体力的にも余裕のある一部の大企業のみが、外需に対してリーチを掛けられるところであり、多くはその大企業にぶら下がる事でしか、その恩恵にあずかる事が難しい状況もあるのではないでしょうか。


 これは需要という視点から見ての話。


 あともう一つは、やはり労働賃金についてもグローバル化してしまった事も挙げられると思います。簡単に言えば、単純な労働作業や、例えば事務処理系についても、すでに企業では海外にアウトソーシングをかけて行っています。だからそれらの仕事は国内では減少していますし、あったとしても賃金が低い仕事となってしまいました。


 まあ実際に、イギリスの航空会社では国内の経理業務をインドと業務提携して進める事で、コストダウンを図れたという実例もありましたが、要はインターネットの環境整備も進んだ事によって、こういった反頭んな仕事はより賃金の安い国や地域へと流出してしまうのは、すでに日本国内に限らず世界中で起きている事でもあるのです。


 現に日本国内の企業に於いても、生産拠点を東南アジア(最近ではベトナム等になるのでしょうか)に移してコストダウンを図るという事も行われているので、それらを敢えてコストのかかる国内に呼び戻せるとも思えませんし、私の勤務している企業でも、コンタクトセンター業務は中国にアウトソーシングされており、国内拠点は既に閉鎖されてしまっています。


 所得格差を是正するという事は、こういった観点も当然論じるべき内容であると思います。


 私の親の世代では「一億総中流社会」と言われ、日本は世界の中でも一番成功した「社会主義国家」であると一時期は揶揄されました。しかし今世紀にはいり国際的にもインターネット設備が世界中で整備されました。そして結果としてそれが「経済のグローバル化」を後押しして、資本の国際間の流動化が進み、その上で労働力の流動も国際的な方向に進んで行ったのではないでしょうか。だから単純に国内の格差是正というのは、国内の視点だけで解決できるものでは無くなっていると思うのです。


 果たして岸田内閣は、こういった事をどれだけ理解して「所得再分配を経済政策の柱」という政策を掲げたのか、そこは知りたい所ですね。


 国内の格差の問題は、確かに政府としてしっかりと取り組むべき事ですが、では国が大企業への法人税を単純に上げたとします。すると簡単に言えば「儲かっている企業」は、海外へと流出する事も考えられるでしょう。一方で国内の企業では、その法人税を上げた事で、より経営がひっ迫してしまう可能性もあると思います。

 だから今の時代、そういった企業の動きを政府がコントロールする事は、とても困難なのでは無いでしょうか。そもそも今世紀に入ってから「小さな政府」に舵を切り、市場原理主義と言われていますが、市場の事は市場に任せると言う方向で日本政府は既に二十年に渡り進んできたのです。


 もう一つ、忘れてはならないのが、やはり日本の格差社会を是正するのは「教育」も大事な事だと思います。いま働いている世代には、様々な手当も必要かと思いますが、国家として考えた場合、それは「暫定対処」の一つにしか過ぎず、日本の格差社会を是正するために、根本的に国が行う事業は私は「教育」だと思います。

 しかし悲しい事ですが、日本の教育界も崩壊をし始めている姿が、度々マスコミを賑わしています。特に最近では、子供の教育を真面目に考えている家庭では、公立学校ではなく私立学校を選択する傾向も強いと言いますが、これは国として教育に力を傾けず、放置してきている結果なのではないでしょうか。


 日本政府には、そういった面も検討して欲しいと思います。


 さて、この所得格差という事で言えば、中々悩ましい時代に突入してしまっているという感を、私自身は拭い去れずにいるのですが、これから選挙に臨む政治家達は、この事についてどの様なビジョンを持っているのか、そこは明確にしてほしい処ですね。



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