自民党総裁選挙も終わり、決選投票により河野氏を降して岸田氏が第100代自民党総裁に選出されました。マスコミなどは、この総裁選挙までの期間、連日に渡り選挙模様を報道し、その加熱ぶりを見てきましたが、これは単なる自由民主党という政党のトップを選出する動きであり、日本の総理大臣を選出するものではないのに、何故か日本の総理大臣を選出するかのように報道し、街中の声をインタビューするにも、あたかも総理大臣選出の様な内容で行っていました。
自民党の総裁なので、菅総理の後の総理大臣には変わりありませんが、今月には総選挙も予定されているので、実質的には総選挙後に日本の総理大臣となる人が、これからの日本のトップになるはずなんですが、どうもこの総裁選挙の過熱ぶりには辟易してしまいました。
そんな状況の中、岸田総裁は自民党の内部人事から閣僚名簿の検討を進めていますが、それに関して以下の様なニュースがありました。
(読売新聞 記事)
岸田氏は岸田派(宏池会、46名)の派閥の領袖なのですが、どうやら自民党の役員人事や閣僚の中には、この宏池会所属の国会議員が選出されていないとの事で、派閥内では不満が漏れ始めているという事です。発表された内容は以下のものでした。 ・麻生 太郎(副総裁・副総理、財務大臣)<麻生派会長>
・甘利 明 (幹事長)<麻生派> ・福田 達夫(総務会長)<細田派>
・髙市 早苗(政調会長)<無派閥> ・遠藤 利明(選対委員長)<谷垣G> ・高木 毅 (国対委員長)<細田派>
・梶山 弘志(幹事長代行)<無派閥>
・小渕 優子(組織運動本部長)<竹下派>
・世耕 弘成(参議院幹事長)<細田派>
この役員人事の内容について、記事の中で自民党の閣僚経験者の話として「安倍さんのひとり勝ちでしょう。幹事長の甘利さんは盟友だし、総務会長の福田氏も同じ派閥(清和会)の後輩だし、政調会長も自分が推した高市さん。当初、官房長官は腹心の萩生田文科相を押し込むとみられていたが、土壇場で松野氏に替えられたようだ。松野さんも清和会です」とある様に、どうやら今回の総裁選について、安倍元総理の一人勝ちという評価であり、岸田派に所属する議員達は、さぞかし「冷や飯」を食わされたという事を感じているのでしょう。
たた今回の総裁選挙を見ていて私が思った事は、今の日本の政治家はいまだ「平時」の認識であり、昨年からの新型コロナ過のパンデミックを経験しても、その認識は何も変わっていないという事です。
◆パンデミックは国家の緊急事態
今回のパンデミックは、はっきり言って「国家の緊急事態」であったはずです。感染拡大を防止するための海外からの渡航禁止、様々な国内企業に対しての活動自粛。またこれによる国内経済の落ち込みや失業者の増加。考えてみれば様々な事態が発生しました。この事により、リストラを受けてしまった人、収入が減少してしまった人なども多くいる中、国民の生活をいかに守るのか、そこは偏に政治の力に拠るしか無いのですが、肝心の政治家が議論して政府として行った事は、「お魚券の配布」「お肉券の配布」を検討したり、国民1人に「2枚の布マスク」を配布した位でした。
確かに様々な助成制度を設けたのは解りますが、その手続きの煩雑さ、支給するまでの時間の長さなど、様々な問題が浮き彫りになりました。結果として要領よい人の中では「助成金のバブル」の様な状況が起きる一方で、本当の必要な人達や企業には助成が行き届いていない状況も発生していたのは、皆さんもご存知の事だと思います。
また感染拡大防止を呼び掛ける「緊急事態宣言」についても、肝心の政治家や官僚の中でも行動の自粛が守られていない事が発覚し、公明党の遠山元議員などが議員辞職をしました。こんな有様なので国民の中には当然緊張感も薄れたのですが、それにわざわざ追い打ちをかける様に東京オリンピック、パラリンピックを開催し、大きな赤字を残してしまいました。この数兆円にも上る負債は、結果としてこれから国民の両肩にずっしりと圧し掛かってくるのです。
この様に国家の緊急事態にも関わらず、国が迷走状態になってしまったのは、偏に政治家達の危機意識の無さと、政府の強力なリーダーシップの無さが原因となのではないでしょうか。自民党政治家の中では「だから憲法改正して法的整備が必要なんだ」という議論もありますが、そもそも政治家に「危機意識」「リーダーシップ意識」が無ければ、いくら法律を整備したところで、国として断固たる行動も出来なければ国民を説得する事も出来ず、結果として迷走状態になる事は間違いないでしょう。
◆岸田体制に見える事
岸田総裁は「自分の特技は人の話を良く聞く事」と言っていますが、この役員人事や漏れ聞こえる閣僚人事の話で見えるのは、「リーダーシップの無さ」であり、リーターとしてポリシーの無さなのでは無いでしょうか。話を聞いても、ただそれだけで自分の行動として表現できる人間に私はどうしても見えないのです。
そもそも「論功行賞」の様な役員人事を行い、閣僚人事を考えている時点で、岸田総裁の中や自民党・公明党にも「危機意識」がなく「従来の平時の政権運営」で動くしかないのが良く見えているのではないでしょうか。
これからの世界は「大きな変革時期」を迎えていくと思いますが、この「平時」しか思い描く事が出来ない政治家ばかりでは、いよいよ日本は世界の中で存在感を無くし、衰退していく事は間違い無いように思えます。
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