いま日本国内では「自民党総裁選」が花盛りです。
私から言わせれば、新型コロナでいまだ国内は「インフォデミック」の渦中であり、様々な問題が山積している状況。そんな時に「一政党の代表選挙」にかまけている時間は無いと思うのですが、どうやら今の日本国内の意識は違うらしく、ここ最近の報道番組は、どこもかしこも自民党総裁選挙一色に染まっています。確かに今年の10月には衆議院総選挙が行われますが、今の状況で自公政権が継続するのであれば、自民党の総裁というのはイコール日本の総理大臣になるので、注目する意味もあるかもしれません。しかし安倍政権から菅政権へと移る中、特に昨年初めからの新型コロナ禍のパンデミックに見える与党政治の様々な醜態がありました。そんな状況でも、自公政権維持がまるで既定路線の様な、報道の過熱ぶりを見るにつけ、日本の国民もかなり舐められたものだと、私は感じているのです。
ここ最近話題になっているのは、この総裁選挙に立候補した、髙市早苗元総務相ですが、本日付けの夕刊フジには以下の様に書かれていましたので、少し引用したいと思います。
自民党総裁選(17日告示、29日投開票)が盛り上がってきた。高市早苗前総務相は8日、「日本経済強靱(きょうじん)化計画」などを掲げて正式な出馬会見を行い、岸田文雄前政調会長は「新自由主義的政策の転換」などの経済政策を発表した。河野太郎行革担当相は出馬に向けた環境整備を急いだ。日本の「次のリーダー」は、新型コロナウイルス対策や経済政策に加え、中国や韓国などの“厄介な隣人”と対峙(たいじ)・共存する覚悟と胆力が求められる。中韓が「警戒する候補」「安心する候補」は一体誰なのか。
ここで髙市早苗女史は以下の様に語った事が紹介されていました。
「日本を守る責任と未来を開く覚悟を持って、立候補を表明する。国の究極の使命は国民の生命と財産、領土、領空、領海、資源を守り抜くことだ。使命を果たすため、すべてをかけて働く」
この言葉はかなり勇ましくもあり、その事からこの女史の総裁選出馬に、中国や韓国が警戒感を高めていると言われています。しかし果たして今の状況の日本で、この髙市女史の言葉通りに「国民の生命と財産、領土、領空、紹介、資源を守りぬく事だ」というのは出来るのでしょうか。ここで少し私の私見について書かせてもらいます。
◆今の日本の状況
昨年の記事ですが、以下のレポートがネット上に掲載されていました。
(Wedge REPORT 吉田哲氏の記事)
ここでは稚内にある風力発電設備について触れていますが、この設備は中国資本の風車メーカーと中国に本社がある設備メーカがメンテナンスを請け負う設備となっているそうですが、この風車設備について防衛省関係者の懸念として、以下の言葉を紹介しています。
「海岸沿いにある基地の周りや山あいに風車があれば、レーダーを乱反射させることになる。事実上の〝壁〟と同じ。機器が外国資本によるものとなれば、有事の際に妨害行為をされる恐れがある」
北海道の水源地周辺も、中国に資本を持つ外資系企業が土地の買い占めをしているのも度々放送されていますし、このレポートの中でも在新潟中国総領事館が新潟県内の土地を移転用地として購入し、塩漬け状態になっている事を紹介。「ビルなり駐車場なり利用方法はいくらでもあるはず。使われないままなのはおかしい」。議会答弁などを通じてこの問題を注視する新潟市の深谷成信市議の言葉を紹介しています。
また今年の3月13日には「LINEやっぱり中国・韓国に個人情報ダダ漏れ」という報道が為された事も記憶に新しい事ですが、ここでは無料通信アプリ「LINE(ライン)」の利用者の個人情報が、中国の企業に筒抜けだったという事がスクープされました。正しくは、システムの管理を委託されていた中国の会社の技術者からアクセス可能な状態になっていて、実際に中国の技術者から少なくとも32回、日本のサーバーにアクセスがあったことが確認されているとのことで、重大なセキュリティ・インシデントだと言われていたのです。
私はIT業界に長くいますが、IT業界では中国や韓国から技術者を派遣会社が雇用し、その彼らが国内の大企業にエンジニアとして派遣され、現場の作業に携わっているという現実もあります。このLINE騒動で「中国の会社の技術者からアクセス可能な状態」と言われていましたが、それでは日本国内のSIerの現場で、中国人や韓国人の派遣エンジニアは何かしら規制が為されているのか、少なくとも私はその様な事は聞いた事がありません。
また2019年には「スーパーシティ構想」の整備の為に、片山(当時)地方創成大臣が、中国との連携を強化するという事から、中国政府で経済政策を統括する国家発展改革委員会のトップ、何立峰主任と地方創生に関する日中両国の協力を強化する覚書を交わしたことを発表しました。
近年ではアメリカを始めとして中国の技術製品をれぞれ自国で採用する事に対して、情報セキュリティの危険性が言われているにも関わらず、今の日本の状況は中国に買い取られ、中国に依存する社会となっていると思うのは、果たして私だけなのでしょうか。
◆日本の国防上の問題
そもそも国防を担うのは政府の役割なのですが、今の政府、いや今の政治家の中で緊張感をもって真剣に考えている人が、一体どれだけいるのでしょうか。そこについても大きな疑問を私は個人的に感じています。
例えば国防と言えば自衛隊ですが、髙市女史の構想の中には「自衛隊」を軍へ昇格する事も考えていると思いますが、それは単純に「憲法に自衛隊を明記する」というレベルの話ではありません。今の自衛隊は形式的にも内実的にも「軍組織」ではありますが、法律制度の上からは「国家公務員」に過ぎないのです。だから自衛隊での違反行為は基本的には、国内法である刑法をはじめとした法律で裁かれ、その審判は裁判所が下します。
しかし軍隊とは基本的には国内法に拘束されず、国際法の下で活動できる組織でなくてはなりません。簡単な話ですが有事の際、国内法に縛られていては、その軍事行動がスポイルされてしまうケースが多く想定されます。ですから各国の軍隊は、国内法とは別に「軍法」により軍は縛られる立場となっていて、軍人の犯罪行為に対する裁判も、通常の裁判ではなく「軍法会議」で裁かれるものとなっています。しかし今の日本国憲法では以下の条文があり、その軍法会議の設置は出来ません。
第七十六条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
2 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
言葉悪く言えば、軍隊が働く場所は人が殺し合う戦場であり、これは非日常の現場です。各国の軍法では戦場に於ける司令官の命令は絶対であり、司令官の命令に対するサポタージュについては、現場司令官の判断で即決裁判が行われ、銃殺が定められているケースが多くあるのも、この戦場という特殊な現場で活動する組織であるからなのです。
簡単に言えば、指揮官が「突撃ー!!」と命令したのであれば、その指揮官の命令下にある兵士は突撃をしなければならないし、もし「死ぬのが嫌だ!」なんて兵士が言う事を認めてしまった場合、戦線が崩壊してしまう場合もあるという壮絶な現場です。だから現場指揮官の命令に部下の兵士は絶対服従であり、不服従であれば厳罰を定めているのが軍法なのです。
自衛隊を正規の軍として定めるのであれば、この憲法第七十六条についても改正が当然必要になりますが、そういった議論は未だ国内の憲法改正議論にすら上がっていないと思うのです。
また近年では自衛官になる人が減少している事もあり、少子高齢化の影響も相まって、自衛隊の中は慢性的に人材不足の状況になっています。もしこれを補うのであれば、やはり日本国内においても他国同様に「徴兵制度」を採り入れなくてはなりません。まあ現代において徴兵制を行うのであれば、何も「赤紙(太平洋戦争当時の召集令状)」を発行する必要はなく、貧困格差が広がっている社会なので「自衛隊で兵役に着けば、除隊後の大学進学は国家で持つ」という制度と作る事で、新兵の補充はある程度可能になると思います。これは「経済的徴兵制」と言い、アメリカなどでは実際に採用していますが、確か日本の防衛省もこういった制度の検討は進めている様です。しかしこの事を検討するにも、当然、国防費の増加は考えられますし、そこは税収を増やす事(増税)で賄わなければなりません。
◆政治の問題
しかし一番大きな問題は、やはり政治の問題だと思います。戦後の日本は現在の「日本国憲法」により「戦争放棄」を謳われている事が広く教育されてきましたが、「戦争」という事については多くの国民は学ぶ機会もなく、正しく理解する事が出来ていない状況です。また過去の太平洋戦争の総括も日本人はしていないので、戦争の何か問題で現実はどの様な状況であったのか、多くの国民は理解していないのです。
その様な国民に真正面から議論をぶつけて納得させられる政治家が、果たして今の日本の政治家の中で、どれだけいるのでしょうか。髙市女史にしても、アジテーションは勇ましい言葉を使っていますが、この「国防(国家安全保障)」に対して、具体的にどの様な課題を日本として抱えており、どの様にそれらを乗り越えていくのかという具体的な言動を、過去にこの女史はしていないではありませんか。過去にもしていないというのは、これからもそんな事は出来ないと私は思うのです。
また日本と言う国は、世界から「スパイ天国」と呼ばれて久しいですが、これだけ好き勝手に外国からつけ込まれ、先にも書きましたが仮想敵国としている中国からの人々の流入も規制する事なくここまで来ているばかりか、既に中国資本も国内に深く浸透しています。この中国からの浸透は、一節には経済的なものだけでなく、政治的にもつけ込まれているという話題も近年では盛んに出てきていますよね。「媚中」という言葉ですが。
また戦後七十年を安逸に過ごしながら政治家になった様な人達が、果たして自衛隊を軍に昇格させたとして、まともに「シビリアン・コントロール(文民統制)」が出来るとも思えません。一番危険な事は「生兵法は大怪我の基」という諺もある様に、シビリアン・コントロール出来ない政治家が、国民をアジテーションで焚き付けて、各国の間で緊張感の高まりを演出し、自衛隊の軍化を扇動する事だと私は思うのです。そしてこのつけは現場で動く自衛官を始め、必ず国民が腹わなければならなくなります。
もう少し日本人には、この髙市女史や過去の安倍総理の言動に見える「ネオコン」の言動を冷静に捉える様になって欲しいと念願して止みません。